2026年4月15日、一般社団法人資産運用業協会は、「投資信託等の運用に関する規則」(以下、運用規則)等の一部改正を公表しました。https://www.imaj.or.jp/about/publiccomment/20260415.html
今回の改正は、未上場株式等の組入比率の制限を超えた場合の対応を整備するものです。対象となるのは、未上場株式等を組み入れる公募投資信託を運用する運用会社です。1
なお、本稿では「委託会社」は「運用会社」と記載します。(規則の引用部分を除く)
改正の背景
運用規則では、投資信託財産への未上場株式等の組み入れについて、一定の上限(原則、投資信託財産の純資産総額の15%)が定められています。(運用規則第11条第2項)
もっとも、資産の組入比率は、運用会社が新たに買い付けた場合だけでなく、時価変動や解約による純資産総額の減少によっても上限を超えることがあります。
そのため、未上場株式等の組入上限超過を懸念するあまり、成長資金供給(クロスオーバー投資)が抑制されるという課題がありました。今回の改正では、上限を超えた場合の対応策を定めつつ、投資家に対する説明と開示を求めています。
上限を超えた場合の対応
未上場株式等の組入比率が上限を超えた場合、運用会社は主に3つの対応を行う必要があります。
①:未上場株式等の新たな組み入れの停止
上限を超えている間、運用会社は未上場株式等を新たに組み入れられません。
パブリックコメント回答でも、「組入比率適正化計画を開示すれば未上場株式等の投資枠が拡大するわけではない」と念押しされています。【項番3】
②:「組入比率適正化計画」の作成
運用会社は、投資家に状況説明するための「組入比率適正化計画」を速やかに作成しなければなりません。
「組入比率適正化計画」には、少なくとも次の事項を含めることが想定されています。【運用規則第19条の2第1項第2号】
- 超過の程度
- 超過が発生した要因
- 未上場株式等の組入比率を上限内に調整するための計画
- 解約制限の実施有無
投資家がファンドの状況を理解するために必要な情報です。
③:「組入比率適正化計画」の開示
運用会社は、「組入比率適正化計画」を作成した際、速やかに自社ホームページその他の方法により開示する義務があります。あわせて、販売会社と連携し、顧客への勧誘時に適切な周知が行われるよう対応する義務があります。
ホームページに開示して終わりではなく、販売会社に連携して、投資家に情報が届くよう主体的に働きかける点に特徴があります。
「組入比率適正化計画」作成準備
運用規則第19条の2第1項第2号には「組入比率適正化計画」が説明すべき事項の手がかりがあります。
| 項目 | 観点 |
| 超過の程度 | ・組入比率をモニタリングする部署は?上限超過後の継続モニタリングを含む。 ・超過発生時にどの部署へ共有し、どの職責までエスカレーションするか |
| 超過が発生した要因 | ・大口解約/時価変動/あるいは双方 |
| 未上場株式等の組入比率を上限内に調整するための計画 | ・どの部署が主導して作成するか |
| 解約制限の実施有無 | ・約款および目論見書の規定との整合性 |
公募投資信託で未上場株式等への投資を行う運用会社におかれては、「組入比率適正化計画」をどの会議体/職責が最終承認するかも運用開始前に定めておくべきです。
「組入比率適正化計画」作成時
未上場株式等は、上場株式と異なり、売却可能な手段が限られます。「組入比率適正化計画」の開示により、処分を余儀なくされている事実が市場や関係者に伝わり、適切な価格での売却が難しくなる可能性もあります。
この点について、パブリックコメント回答では、組入資産の性質や個別銘柄の状況によって様々な事情があるため、超過解消時期の期限について一律に開示を求めることは困難であるとの考え方が示されています。
同時に上限を超過している状態は通常よりもリスクが高まっている状況ともいえるため、フィデューシャリーデューティーの観点から、運用会社において適切な開示内容を検討すべきとされています。【項番5】
直ちに売却しない理由、どのような方針で上限内への調整に取り組むのか、投資家に説明できる内容にします。もう少し項目を明確化すると、売却可能性、価格への影響、投資家利益、解約対応等を含めるのが適切と考えます。
「組入比率適正化計画」開示
「組入比率適正化計画」の開示においても、事前に定めておく事項があります。
| 項目 | 観点 |
| 自社ホームページ(開示) | ・作成後速やかに開示とされており、ホームページ管理部署との情報共有 ・ホームページの管理を外部委託している場合には、適時開示項目が増えた旨を連絡(未上場株式等に投資する公募投資信託を運用する際) |
| 自社ホームページ(取り下げ) | ・超過が解消した場合には「組入比率適正化計画」の上に解消日を告知することが一案として挙げられる まだ超過中であるかのような印象は新規の投資家を獲得するのにマイナスとなる ・しかし、ページを完全に削除してしまうと、目論見書からのリンク先がなくなる。目論見書のURLをクリックしたら、404 NOT FOUNDが表示されるのは、ユーザーエクスペリエンスの観点からマイナス 〇年○月〇日をもって組み入れ超過は解消しましたと、目につきやすい箇所に情報を入れるのが良いと考える |
| 販売会社連携 | ・窓口は運用会社の営業員と思われるが、運用担当者やプロダクトスペシャリストも説明に同席するのはどのような場合か ・超過が解消した場合も速やかに連絡 |
| 月次レポート | ・具体的な内容を記載する方法、超過した旨を簡潔に記載する方法、該当資料のURLを記載する方法など ・ディスクロージャー書類作成部署に適時開示項目が増えた旨を連絡(未上場株式等に投資する公募投資信託を運用する際) |
| 目論見書(超過後の初回改定) | ・「組入比率適正化計画」の開示後、目論見書改定時まで上限を超えた状態が継続している場合、「組入比率適正化計画」が運用会社のホームページその他の方法により開示されている旨を目論見書に記載する必要。ただし、目論見書に組入比率適正化計画の内容まで詳細に記載することは求められていない2【項番11】 ・ディスクロージャー書類作成部署に開示項目が増えた旨を連絡(未上場株式等に投資する公募投資信託を運用する際) |
| 目論見書(超過後の2回目改定以降) | パブリックコメント回答では、「最初の」の意味は、2度目以降の目論見書には記載しなくてもよいという解釈ではないことが明示【項番12】 目論見書改定のチェックリストに、次の確認項目を追加 ・組入比率適正化計画を開示しているファンドか ・目論見書改定時点で上限超過が継続しているか ・目論見書にホームページ等で計画が開示されている旨を記載しているか ・2度目以降の改定時にも確認しているか |
引用「投資信託及び投資法人に係る運用報告書等に関する規則」
第19条の3第5項 委託会社は、組入比率適正化計画の開示後最初の目論見書改定時まで運用規則第19条の2第1項に定める未上場株式等の組入比率の上限を超えた状態が継続している場合には、組入比率適正化計画が委託会社のホームページその他の方法により開示されている旨を目論見書に記載するものとする。
パブリックコメント【項番11】:第5項で「組入比率適正化計画の開示後最初の目論見書改定時」とありますが、開示後2度目の目論見書改定時まで上限を超えた状態が継続する可能性もあります。
上限超過の状態が長期化することを良しとするものではありませんが、「最初の」と限定することで2度目以降の目論見書には記載しなくても良いという解釈にもなり得ます。
「組入比率適正化計画の開示以降の目論見書改定時において・・・上限を超えた状態が継続している場合には」としてはいかがでしょうか
パブリックコメント回答【項番11】:ご理解のとおり、「最初の」の意味は、2度目以降の目論見書には記載しなくても良いとの解釈ではありません。
修正案をいただき恐縮ですが、本回答をもって解釈を明示することにより、原案のとおりとさせていただきます。
30日以上超過状態が継続する場合
未上場株式等の組入比率の上限を超える事態が発生した日から、発生日を含めて30日以上(※30営業日ではなく30日)、上限を超える状態が継続する場合、運用会社は「組入比率適正化計画」の内容を精査して、再度開示しなければなりません。
未上場株式等は流動性が低く、売却時期を機械的に決められないことがあります。そのため、超過発生後に対応するのではなく、事前に社内フローを定めておきます。
その他の留意点
一度解消した後に再度超過した場合
未上場株式等の組入比率が一度上限内に戻り、その後再び上限を超えることもあります。
「組入比率適正化計画」を一度取り下げた後に再度上限を超えたときは、新たに「組入比率適正化計画」を開示する必要があります。パブリックコメント【項番8】
上限超過が新たに発生した際は、その時点の状況に応じて、改めて「組入比率適正化計画」を作成・開示しなければなりません。
ロックアップ銘柄の取扱い
上場前に組み入れ、上場後も一定期間継続保有義務が課されるロックアップ銘柄も注意を要します。
制度ロックアップ期間中の上場株式は、未上場の段階から継続して組み入れられている銘柄であることから、本規定の対象と考えて差し支えないとされています。パブリックコメント【項番6】
「上場したから未上場株式等の管理から直ちに外れる」という整理は避けます。
まとめ
今回の改正を踏まえ、対象となる運用会社では、少なくとも下記の対応が求められます。運用、商品、法務・コンプライアンス、ディスクロージャー、販売会社対応部門が連携して対応します。
- 上限超過時のエスカレーションルートを定める
- 組入比率適正化計画の作成担当部署を定める
- 開示の作成・再鑑・承認フローを整備する
- ホームページ掲載・情報更新方法の確認(外部委託先連携含む)
- 販売会社への連絡・周知部署を定める
- 30日ごとの再確認・再開示管理を行う
- 目論見書改定時の確認項目を追加する
- 2度目以降の目論見書改定時にも確認
未上場株式等の組入比率上限超過の原因、現在の状況、是正方針、投資家への影響を整理し、投資家に速やかに開示するよう自主規制ルールは定めています。
本改正は、比率規制の例外ではなく、超過時の対応を制度化したものと理解しています。よりよい開示の一助になるのを願っています。

