組織改編と業務方法書

実務上のポイント

1月1日付で組織改編があった投資運用会社様があるかもしれません。今日は、組織改編に起因して金融庁に届け出る必要がある書類をおさらいします。

業務の内容および方法を記載した書類

金融商品取引業は登録を要する業態1です。金融商品取引業者となるためには、金商法第29条の2により登録の申請を行わなければなりません。登録時に提出すべき書類は同第1項と第2項に列挙されており、本日焦点を当てるのは、第2項第2号「業務の内容および方法を記載した書類(以下、業務方法書)」です。これが参照する金商業等府令第8条には業務方法書に記されるべき事項が事細かに書かれています。1から12号があり、5号までは金融商品取引業のどの業態でも共通の記載事項です。第3号「業務の分掌」が肝になります。

「別に定める」と「別紙」

多くの投資運用会社様において、業務方法書における業務の分掌は社内の部署を1つづつ挙げて業務を説明するのではなく、「「別紙 組織規程」および「業務分掌規程」によるものとする。」というように別規定を参照する形になっているはずです。関東財務局のHPに掲載されている業務方法書の記載例でもそのようになっています。2

そして、参照する条文を「別紙」としている場合には、業務方法書と一体とみなされるため、変更があった場合には金商法第31条第3項の規定により変更届出が必要です。提出期限は条文が「遅滞なく届出」となっているので、実務上の目安としては1か月以内です。(もちろん早い方がよいです

なお、業務方法書の変更は投資信託協会への届出事項にも該当します3

ここまでが、金商法第29条の2第2項でした。

【付記】金商法第29条の2第1項第1-4号

登録申請書の記載要件が並んでいます。1号商号等 2号資本金の額等 3号役員の氏名 4号政令で定める使用人(法令等遵守等に係る業務を統括する者等、投資助言・投資運用部門を統括する者等)が変更になった場合は、2週間以内の届出が必要です4

商号が変わること初めいずれもそう頻繁には起きないですが、万一、社外取締役が変わったり、運用部署orコンプライアンス部署に新入社員があった場合/退職者があった場合には留意しなければなりません。第2項の書類とは違って、届出期限は2週間以内と明示されています

今月の次の営業日は1/9であり、1/1付で1-4号に該当する事項の変更が起きていてもまだ届出は間に合います。不安な方は火曜に確認しましょう。

〇第1-4号も投信協会への届出事項に該当します。さらに、投信協会は役員や重要な使用人の変更に関して「役職の変更を含む」としています。看過してしまいがちなので、この点は強調させてください。

【豆知識】

1号 商号:例えば架空の運用会社、がっぽりアセットマネジメント株式会社の社名はがっぽりアセットマネジメントですが、商号はがっぽりアセットマネジメント株式会社です。株式会社という法上の組織形態までが商号となります。

4号 政令で定める使用人:金商法施行令第15条の4とこれが参照する金商業等府令第6条5に定めがあります。第1号はコンプライアンス責任者とそれに準じる者 第2号は助言部門/運用部門の責任者と投資判断を行う者です。第1号が少しひっかけのようになっていて、コンプライアンス責任者だけではなく、その権限を代行し得る地位にある者も含まれます。「コンプライアンス副部長」などが置かれていて、業務分掌でコンプライアンス部長に事故ある時の代行者とされている場合は、届出を要すると解されます。

そして、コンプライアンス副部長の実質的な権限が変わらないながら役職名がコンプライアンス部 副部長になった際には、前述のとおり投信協会への届出が必要です。

  1. 第二十九条 金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。 ↩︎
  2. https://lfb.mof.go.jp/kantou/kinyuu/kinshotorihou/mokuji_yousikisyuu.htm ↩︎
  3. 定款の施行に関する規則 第10条第1項第6号 別紙様式第14号による届出が求められる ↩︎
  4. 第三十一条 金融商品取引業者は、第二十九条の二第一項各号(第五号、第六号、第七号ロ、第八号及び第九号を除く。)に掲げる事項について変更があつたときは、その日から二週間以内に、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。 ↩︎
  5. (登録の申請又は届出に係る使用人)
    第六条 令第十五条の四第一号に規定する内閣府令で定める者は、部長、次長、課長その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、同号に規定する業務を統括する者の権限を代行し得る地位にある者とする。
     令第十五条の四第二号に規定する内閣府令で定める者は、金融商品の価値等(法第二条第八項第十一号ロに規定する金融商品の価値等をいう。以下同じ。)の分析に基づく投資判断を行う者(投資助言業務に関し当該投資判断を行う者にあっては、第一種金融商品取引業(有価証券関連業に該当するものに限る。)に係る外務員の職務を併せ行うものを除く。)とする。 ↩︎
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