景表法のポイント

実務上のポイント

新年最初のイベント等で、景品類をお配りするアセットマネジメント会社様の参考になればと思い、当記事を書きました。フィージビリティ確認は昨年のうちに終わっていると思いますが、景品類に関しての規制をおさらいしたいと思います。

景表法における重要用語の定義

不当景品類及び不当表示防止法(以下、景表法)第2条には、重要用語の定義がなされています。3項と4項を引用し、鍵になると考える部分に下線を引きます。

3 この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。
4 この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。

景表法は告示等でより詳細が示されており、「景品類等の指定の告示の運用基準について」1が上記を詳しく説明しています。

景品類       該当する該当しない        備考
顧客を誘引するための手段取引の継続や取引量の増大を誘引する手段

(省略)提供者の主観的意図やその企画の名目は問わない。客観的に見て顧客誘引の手段になっているかで判断とはっきり書いてあるので、「日頃の感謝」や「大口ご投資家様への還元」などで回避することはできない。

ファンドの追加買付は取引の増大に該当し、ファンドの解約阻止は取引の継続に該当すると思慮
取引に付随・商品又は役務を購入することにより、経済上の利益の提供を受けることが可能又は容易になる場合

・取引の勧誘に際して、相手方に、金品、招待券等を供与
(省略)自己の供給する商品又は役務の購入者を紹介してくれた人に対する謝礼は、「取引に附随」する提供に当たらない(紹介者を当該商品又は役務の購入者に限定する場合を除く。)
経済上の利益で、内閣総理大臣が指定物品、金銭、金券、有価証券、供応、労務・役務と幅広く規定。
思いつく太宗のモノはカバーされている
・値引は経済上の利益に該当しない2

・仕事の報酬も経済上の利益に該当しない3
不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件4

販売額が多かった販売会社営業員のディズニーランド招待(供応)は、仕事の報酬と整理可能と思慮。販売委託契約に基づく労務提供への報酬であるため
注)備考欄で「・・・思慮」としているものは筆者の見解です。

景品類の上限価額

アセットマネジメント会社がファンドの購入者に配布する物品は景品類に該当すると考えます。そして、これは無制限に豪華な物品を配れるのではなく、取引の価額と提供方法により上限が存在します。

1つあたりの上限        総額(1つあたり×個数)の上限
総付取引の価額1,000円未満 200円
取引の価額1,000円以上 20%
(定めなし)
一般懸賞取引の価額5000円未満 20倍
同5000円以上     10万円
懸賞の対象となる売上予定総額の2%
共同懸賞30万円懸賞の対象となる売上予定総額の3%

懸賞とは、偶発/優劣正誤により提供者を決める方法です。偶発の例:抽選 優劣:テーマに沿った俳句の作成 正誤の例:クイズ

総付とは、上記の懸賞によらない方法を指します。先着順、来場者全員にプレゼントなど

また、取引の価額とは「景品類と同じものが市販されている場合は、景品類の提供を受ける者が、それを通常購入するときの価格による」とされています(景品類の価額の算定基準について)5提供を受ける者が一般消費者の場合は「卸売価格」や「業者間価格」で買えることはありませんので、通常の小売り市場価格となります。ルイ・ヴィトンのバッグの原価はユニクロのバックと大差ないかもしれませんが、景品類の価値として図る時はあくまで市場価格です。

なお、「購入を条件とせずに、店舗への入店者に対して景品類を提供する場合の「取引の価額」は、原則として、百円とする。」となっています(「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について)6。よって、商品やサービスの購入者に限らず、一般に募った無料セミナー来場者への粗品上限は原則200円となります。

事例検討

アセマネ会社で実際にありそうな事案を検討します。

①ファンド購入者限定で、高級ボールペンを配りたい。問題がありそうか?
 当ファンドはハイネットワース向けであり、300万円以上、1万円単位で購入できる。
 判断に必要な情報【     】

②系列の証券会社主催で開くファンドセミナーへの来場者全員に参加お礼として高級ボールペンを配り
 たい。問題がありそうか?
 判断に必要な情報【     】


2日ほど時間を置いて、当事案に対する私なりの見解を記載します。お時間ある方は考えてみてください。

「「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について」に手がかりがあります。

  1. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_20.pdf ↩︎
  2. 消費者庁 Q35 景品類でないものを教えてください への回答。https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/premium/other#q35 ↩︎
  3. 同上 ↩︎
  4. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_6.pdf ↩︎
  5. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_21.pdf ↩︎
  6. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_22.pdf ↩︎
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